2014年8月11日月曜日

3500円


先日、浜松の鴨江アートバザールという場所で開催された「¥3500?展」に出品しました。

チラシをデザインしていたのが、以前講義に行った学校の生徒さんでした。

Facebookで展示情報を知り、出品アイデアを思いついたのですが、
公募には腰が重いタイプですし、結局出す事はないだろうと思っていました。

ですが、たまたまそのOさんとトークイベントで会った時に、
そのアイデアで盛り上がり、出品する事を決めました。

「作品を3500円で即売することで、美術作品を売ることと買うことについて思考する企画」とのこと。

バタバタしていて、思いついていたアイデアを完成させたのは開催日の二日前。。。。




その日、僕は3500円を持って銀行に行き、それを3500枚の1円硬貨に両替しました。

その重さは3500g

3500円の価値自体に変化はありませんが、重さが大きく変化しました。

それを入れたコンビニの袋が、急に頼りない表情を見せ、
窓口のお姉さんは妙な表情を僕にくれました。

70本の1円硬貨の塊に「大金を受け取っているかのような感覚」になりながら、
その本数を数える僕の、少し緊張した表情も面白かったです。

そして、事務所にもどり、はかりに並べて「かっこいい」とつぶやく僕。

新鮮な体験ばかりでした。




この状態を完成品として出品。
タイトルもプライスも「3500円」。

※3.5kgを指しているはかりは展示什器です。


僕が実製作にかかった時間は、窓口で大量の1円玉への両替を待つ9分51秒。

窓口で受け取った時のコンビニ袋の状態で、出品しました。



この作品を買う人は、両替同様お金の価値には何の変化もありません。

ただ、持ち帰る時に重量が増すだけ。
その重量は産まれた赤ちゃんの体重に近いです。

お金の3500gは重く感じます。
人間の3500gは非常に軽く、か弱いものです。

大人になると、3500円は安い買い物ですが、
子供の頃に3500円を持って駄菓子屋に行ったら、キングです。

3500円のポストカードは高いけど、
好きなアーティストのサインが入っていたら安いかもしれません。



売れなかったら、神社の賽銭箱にでも入れてください。と伝えて展示してきましたが、
搬入時にお話ししたセンターの館長さんが購入してくださったとの事。

共感と「恩情」に感謝します(笑)





今回、僕はアイデアを生んだだけで、実際に作品を作ったのは、
銀行と両替を担当した窓口のお姉さん。

その対価とも言えるのでしょう、今回3500円を3500枚の1円硬貨に変えた事で、
僕は銀行に2268円の両替手数料を支払いました。

そして、売り上げた3500円は932円の手数料が差し引かれて僕のところに戻ってきました。

今回、3500円の1円玉を売るために、僕が支払った手数料の合計は3200円です。




物が売買される時、どこかで誰かが金銭的に損をしています。

買う人が原価よりも安く買っていたら、売るという商売は当然成り立ちません。

買う人は売る人のやむを得ない理由がない限り、金額的に損をするわけです。

ですが、最も重要なのは、そのお金を支払うに値する、何かしらの「変化」があるのかどうかという事です。

金銭的に損をして、心理的には得をするというのが正常だと思います。



今回、僕は金銭的に損をして1円玉を両替して「作品」としました。
僕は金銭的に損をする対価として、「楽しみ」と「思考する機会」を手に入れました。

特に、銀行で両替を待つ9分51秒。

こうしてお金はお金を生むのだなと実感し、
銀行のお姉さんの働きと時計の動きを交互に眺めておりました。